インド洋に浮かぶ光り輝く島、スリランカ。豊かな大自然に恵まれ、セイロン紅茶の産地、野生動物の王国として有名ですが、実は世界で最も長く――2200 年以上にわたり仏教が信仰され続けている敬虔な仏教国でもあります。スリランカの中央部にあるアヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディの3 都市を結ぶ線の内側は「文化三角地帯」と呼ばれ、仏教遺跡が特に集中しています。この3都市は紀元前5世紀から続いた歴代のシンハラ王朝が築いた都です。仏教は紀元前3 世紀にインドから古都アヌダーラプラに伝わり、そこから各地へ広まってゆきました。アヌダーラプラに建ち並ぶ巨大な仏塔（ダーガバ）や、シーギリヤの仏教壁画、タンブッラの石窟寺院は、その栄華を今に伝えています。
インドからの侵略を受けて遷都したポロンナルワには、全長14m の巨大な一枚岩から涅槃像など掘り出したガル・ヴィハーラなど、大規模な遺跡が作られました。そして、シンハラ王朝最後の都となったキャンディでは、王権の象徴である「仏歯」が今なお大切に祀られていて、年に一度のペラヘラ祭では象の背中に乗せられて市内を練り歩きます。この旅行では、シンハラ王朝の主要な仏教遺跡を訪ねながら、特に上座部と大乗仏教が併存していた紀元後3 世紀から12 世紀に注目して、スリランカ仏教の歴史をたどります。 （吉村 誠）

吉村 誠（よしむらまこと）氏の横顔
略歴：1969 年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程修了。博士（文学）。現在、駒澤大学教授。早稲田大学エクステンションセンター、朝日カルチャーセンター講師。
著書に『中国唯識思想史研究―玄奘と唯識学派―』（大蔵出版、2013 年）、『般若心経幽賛を読む―唯識の修行―』（春秋社、2024年）、訳書に『続高僧伝Ⅰ』（大蔵出版、2012年）、編著に『玄奘三蔵と薬師寺』（薬師寺、2015年）などがある。論文多数